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セミナーアーカイブ Vol.2

知れば知るほど現場に強くなる!
あなたをイキイキさせるスキンケアセミナー

まだまだ進化が止まらない!
スピードトリミング®
~シャンプー剤は道具の一部 最新の洗い方をどこよりも早く伝授~

講師 髙木 美樹(TALL TREE.)

ペティエンスでは、ベイジングの重要性に着眼したナノベイジングプロの発売にあたり、2018年の全米トリミングコンテストSuperZooで2冠を達成した実力派トリマーTALL TREE.の髙木美樹先生に、『ベイジング、シャンプーする際の工夫、具体的方法』についてお話いただきました。常にスピードトリミング®を研究、日々進化させていらっしゃる髙木先生に、大切にしている『接客術のポイント』とともに、今日から実践したい“最新の考え、工夫、時短のポイント”を余すところなくお話いただいています。もちろん洗い方の中では、新製品『ナノベイジングプロ』の効果と髙木流の具体的な使い方も教えていただきました。
すぐに実践できるポイントをまとめましたので、是非ご覧ください。

ワンちゃんの一生を考えたトリミング

トリミングは犬にとって大きなストレスです。スピードトリミング®とは、「ワンちゃんにかかるトリミングの負担を軽くしたい」という思いから生まれたトリミング方法です。
そのため、ただ早く行うことが目的ではありません。トリミング自体に要する時間を大幅に短縮できる方法ですが、犬のトイレ休憩やリラックスタイムを設けているため、場合によっては通常よりも長く預かることがあります。特に、初回の来店時は、犬との信頼関係を構築するために多くの時間を割きます。犬の視点に立ち、それぞれの性格に合った最善の方法を探ることは、その犬の一生を考えることでもあります。

シャンプー前のチェックポイント


表1 シャンプー前の重要な
チェックポイント

シャンプー前の重要なチェックポイントには、前回のトリミングの評価、犬種に特徴的な汚れやすい部位など、いくつか挙げられます(表1)。犬の健康面に関しては、全身状態に留意することはもちろんですが、特に目の周りの確認が大切です。シャンプー剤やカットによって飛散する被毛が、眼に刺激を与える可能性があるため、充血していたり、眼脂(目やに)の量が多い犬では、シャンプー前に飼い主さんの了承を得ておくとよいでしょう。

また、きちんと「汚れの見極め」をすることによって、トリミング後の状態を維持できる期間に差が出ます。犬種や部位によって汚れの性質は異なるため、個々の犬の状態に合った複数のシャンプーを使い分けます。
当店ではシャンプー剤を道具の一つとして捉え、クレンジングオイル、プレベイジング剤 (ベイジング前の下処理剤)、下洗いシャンプー、および仕上げシャンプーの4種類を使い分けています。シザーを使い分けるのと同様に、これらをプロとしてどう使いこなすかが重要です。スピードトリミング®を実践するうえでは、このなかでも下洗い前の処理が特に大切です。


図3 TALL TREE.におけるナノベイジングプロの基本の使い方

ひどい汚れにはクレンジングオイル

クレンジングオイルは、趾間、耳介の縁、顔のストップなどにみられる固形の皮脂のように、汚れのひどい部位に対して用います。1回目の下洗いシャンプー前の被毛が乾いた状態で、汚れと同量のクレンジングオイルを付け、溶かし出すように洗った後、十分に洗い流します。直接シャワーを当てられない顔のストップや皺壁などの細かい部位の洗浄には、柔らかく吸水性が高いスポンジ(紙めくり用の事務用品)が便利です。クレンジングオイルは水と反応すると白く乳化するため、すすいだ水の色が透明になるまで、洗い残しが無いことが確認できるまでしっかり洗浄します。

効率を上げるプレベイジング剤

当店では現在、プレベイジング剤としてナノベイジングプロ(図1)を採用しています。ナノベイジングプロは、図2のように微粒子化(ナノ化)された界面活性剤で汚れを包み込むため、より小さな皮脂まで取り除くことができます。そのため、ゴシゴシと擦り洗いをする必要はありません。また、毛玉やアンダーコートがある犬に対して使用すると、被毛のもつれが解きやすくなる印象です。ナノベイジングプロは通常のシャンプー剤としてももちろん使用可能ですが、比較的価格が高いので経営的にはコストが気になります。そこで当店では、下洗い前のすすぎにナノベイジングプロを使用し、さらに「汚れシャンプー代」として飼い主さんへご請求しています。この場合、飼い主さんの費用負担も考慮して、「汚れシャンプー代」は定額設定せず、使用した分だけを算出しています。

また、図3のように使用することで、皮脂の洗浄効果が高いナノベイジングプロに必要以上に触れることがなくなるため、毎日たくさんシャンプーをしているスタッフの手を守ることが可能です。

シャンプー後は必ず保湿

シャンプーの下処理によって汚れはきれいに洗浄されますが、同時に皮脂も落とされるため保湿剤は必ず使用します。当店ではスプレータイプの保湿剤(Para-sol 高濃度セラミドモイスチャースプレー、図4a)を使用しています。スプレータイプの保湿剤は、被毛が乾いた状態だと皮膚に到達しにくいので、洗った直後の濡れた状態の皮膚に直接スプレーします。腹部や腋窩部のような被毛が薄い部位は、皮膚の水分が蒸散しやすいと考えられるので、他の部位よりも多めに保湿剤を使用します。また、バリカンをかけた部位やスリッカーを多く使用した部位も同様です。

さらに、赤みや炎症がみられる趾間やパッド間に対してバリカンをかけなくてはならないような場合は、殺菌作用のあるクロルヘキシジングルコン酸塩を含む保湿剤スプレー(ベッツダーマケア スプレー、図4b)を使用し、自宅でも継続して使用いただくよう飼い主さんにもおすすめしています。

リピーターを獲得する接客術

接客においては基本となる3つの信念があります。まずは1. 犬が主語であることです。犬が嫌な思いすると考えられることは、たとえ飼い主さんの注文であっても拒否する姿勢が必要です。そのためには、2. 理由があるすなわち飼い主さんを納得させられる根拠があるかどうかです。さらに、こちらの意見を受け入れてもらうのであれば、飼い主さんに寄り添って共感してあげる、つまり3. 味方であることを示すことが大事です。言い換えれば、第2の飼い主として考えることです。

トリミングは、犬種によっては一生付き合っていかなければならないイベントです。ですから、初回にどうしても嫌がるような場合は、トラウマになることを避けるために諦めることも必要です。その犬の一生を考えているならば、プロとして「できない」と言うことは恥ずかしいことではありません。毎回無理にトリミングを行った結果、ある日から急に「できません」と言うことのほうが無責任ではないでしょうか。接客では、第2の飼い主として寄り添う気持ちが大切なのです。例えば、皮膚病の疑いがあれば、普段よりも来店の周期を短くしてもらったり、動物病院で診察を受けたのであれば、電話で飼い主さんに経過を確認したり、一緒に心配することで飼い主さんからの信頼を得ることができます。

このような関係を構築するうえで、カルテの作成は重要です。カルテには、犬および飼い主さんの生活環境の変化、耳の状態、毛玉の有無・位置・でき方、皮膚の状態、違和感(嫌がる、舐めるなど)、口臭・口腔内の状態、体重、便や尿の状態について記載します。 これらについて知り得る情報をできるだけ詳しく記録しておくことで、早期に異常を察知することができ、ひいては病気の発見と治癒につながる可能性があります。
トリマーは獣医師よりも普段の状態を把握できる立ち位置なのです。犬の皮膚病治療は、獣医師、飼い主さん、そしてトリマーが三位一体となって取り組むものだと考えています。ですので、学習意欲を常にもち、応援されるトリマーであることを目指しましょう。


セミナーアーカイブ Vol.2
※スピードトリミング®は、株式会社TALLTREE.の登録商標です。